小郡市に計画した20代夫婦とお子様2人、お祖母様のための住宅。周辺は昔ながらの低層住宅群と雑草地に囲まれた風の通り抜ける心地のよい敷地であった。施主にヒアリングをしていたところ「いちばんに風水を守りたい」と。そんな要望から計画を考えることとなった。
日本でいう風水とは、家相や占いのような位置付けが色濃く残る。が、古来中国では天文学や地理学から派生した、気の思想であり、その土地々々の気候風土と相性の良い間取りを考えることであった。わかりやすく言えば、年中を通して気持ちよく風が抜けたり、日中に暖かな日の射し込んだり、心地よいと感じさせてくれる空間構成を考えることでもある。つまり、与えられた環境、配される土地の環境ををふんだんに読み解く環境統計学だとも解釈できる。
そこで、気象庁が発行するその土地の気候風土の統計を題材とし、それに家相的(現在の日本的)な風水思想をハイブリットさせようと考えた。その統計資料をみてみると、敷地は年中を通して、南北に風が抜ける敷地であることがわかり、そこに着眼しながら「ちいさな部屋」と「おおきな部屋」をつくった。具体的には、ホールのようにおおきな部屋を南北に通し、それに纏い付くように「ちいさな部屋」を東西に振り分けて配置した。そうすると、たとえば、家相的な風水的思想によって、間取りとして「水回りはここが適している」と、ちいさな部屋の「室名」の入れ替えが起きたとしても、「おおきな部屋」が環境統計学を守ってくれる。外部環境が流れ込み、心地よい空気感の揺蕩うおおきな部屋では、家族が団欒し、いつもそこを起点として生活が繰り広げられる。
結果として、土地に根ざした環境を生かし続け、玄関から南の庭まで風が抜け、中間期には開け放っても気持ちのよい場ができあがった。
H邸/小郡の住宅
house of OGORI
architecture house 2018