福岡県久留米市の老舗ケーキ屋の移転計画。世代交代をし、先代の想いを受け継きながらも、自分らしいお店を表現したい。そんな想いから始まったプロジェクトである。
敷地は、大規模スーパーを経ての屋内駐車場となった場所の一角。上階は高層階のマンションのため、消防関係や既存不適格とならないように行政機関と慎重に協議を重ねながら、新しく外壁を施し、店舗の輪郭をつくっていった。
通りに面した外部は、朽ちてゆく表情に時を感じさせてくれるモルタルを原料した素材とし、建具はメラピー材のオイルフィニッシュで製作し、古くからそこになったかのような想いを継承した。内部は明るさを抑えたグレージュを基調として、品のある佇まいとした。
お店のサインは、先代からのケーキと新規に始めるパンをモチーフとした。ケーキ部分の孔(ショートケーキの苺を模した)には、四季折々の味を楽しんでもらえるような花器(一輪挿し)のような役割を与え、生きるサインとした。
サインに活けられた花々の表情と、永い年月のなかで染み出してくる外壁の表情。ふたつの時間軸の中で、この街の見慣れた風景になればいいと願う。

MONSIEUR HIRO/久留米の洋菓子店
MONSIEUR HIRO
interior renovation 2018